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Instead of drink 《テニプリ越前 リョーマ》

第2章 その場所


ドアを開ければ既に大音量が部屋を包んでいて。
が放った挨拶もかき消されてしまったがドア付近にいた小柄な姿が無言で席を左寄りに詰めた。
はあ…と声を漏らしそこに座るべきか否か悩んだ。
だってそこにいたのはそいつだったから。
の目にいつも最高に輝いて映った越前リョーマだったから。
リョーマは足を組んでテーブルの上のお気に入りの飲み物を口に運びながら、無表情で歌詞が映し出されている画面を見つめている。

「おおーきたなー!」

そう叫んだのはマイクを握り機嫌がよさそうな額の髪を上げたお祭り人間。

「そこ座れって!」

指差されたのは先程リョーマが僅かに開けた空間で。
は辿辿しくそこに座った。

室内が揺れ動くんじゃないかと思う程の大音量の室内。
隣のリョーマは無理やりマイクを握らされて意外に古い歌を歌っていた。
そのまだ僅かに高い歌声はの心を魅了した。
が、リョーマの歌声を聴いたのはそれ一度だけ。
制限時間の終わりを告げる電話の音はとられては延長を告げ。
盛り上げようと手拍子を続けるの手も赤くなってきた頃だった。

突然隣から伸びてきた右手がの左手首を掴む。

「赤くなってんじゃん、無理することないんじゃない。先輩自分だけで充分盛り上がってるし」

そう言った。
掴まれた手首から熱い何かが流れてくる気がして、は声も出せずにいた。心臓から湧き上がる熱い熱い何か。
早打ちする鼓動は手首を通ってリョーマにつたわってしまうんじゃないかという程で。

「あ、あのッ」

思い切って声を出してみたものの。
既に手首は離されていてリョーマの大きな目は瞼で覆われていた。

まるで、コントの世界。
自分の鼓動に気をとられさっさと離された手にも気づかずにいて。
しかもそうさせた本人は既に意識がない。
スーと寝息をたてるその姿はまるで子猫のようだった。
よくこんなうるさい場所でしかも短時間で熟睡できるなあと、がある意味感心していた時。

「なんだよ~越前寝てるし!」

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