Instead of drink 《テニプリ越前 リョーマ》
第3章 夕暮れ
頭に思い浮かべたくないことばかり浮かんできた。羅列するように。
思い浮かべたくないのにそればかり想像してしまっていた。今までずっと。
あの子が彼の隣で笑っていること。
彼があの子に……
ああだめだ、今だってこんなに思い浮かべたくないことを思い浮かべている。
私の脳内は最早リョーマとあの子を応援する誰かと一緒だ。
「どんな話をしたって」
リョーマがそう言った。
はえ、と僅かに声を漏らした。
声になっていたようななっていないような空気のように漏れる声を。
リョーマはその場に立ったまま表情を変えずに言った。
「竜崎が俺に話したことだから 言わないよ」
目の前が真っ暗になった。
いやもうここが真っ暗なのだからそれは当たり前なのだ。
当たり前だけど本当に真っ暗になったのだ。
目が熱い。だめだこれは流れてしまう。私の目からここで流すべきじゃないあれを。あれは私の心を激しく揺さぶり荒れ狂い、そして外見をも酷い状態にさせる。
彼の前で、
そう、泣きたくない。涙は流せない。
「あっ、あっ、そ、そうだよね!ごめんはははごめんごめん私帰るね!」
下を向いてそこから逃げる。もう逃げるしかない。右足左足とだしてそこから一気に加速する。
そうするつもりだった。
が、右腕を引かれたのだ、後ろに。
「は、離して」
「勘違いすんなよ」
の離してという声に被せてリョーマが言った。
ドキッとした。
リョーマは…リョーマはあまりこういう言葉を使わない。少し強めの口調がを制止させた。