Instead of drink 《テニプリ越前 リョーマ》
第3章 夕暮れ
「さん」
すっかり日も落ちてしまった公園にリョーマの声が響いた。
の肩が一瞬すくんだ。
リョーマが名前を呼んだ。けれど振り向くことができない。
自分の顔がだんだんと下を向いている。
まるで萎れた花のように。
リョーマからすれば自分なんて萎れた花も同然だ。
「俺 アンタのこと呼んでるよ」
『呼んでるよ』
そういったリョーマの声はどこか頼りないようないつものリョーマとは少し違うように聞こえた。
でもどんな顔で振り向けばいいのだろう。
「俺のほう 見てよ」
さらに耳に打ち付けるような声。
は瞬きを繰り返しながら小さく息を吸い込みゆっくりと振り返った。
目線は下を向いたまま、ちょうどリョーマのテニスシューズに視線を合わせて。
今リョーマの目を見れるわけがない。
あの真っ直ぐに見つめてくる目を。
「ちゃんと俺のこと見ないとまた襲うよ」
リョーマがそう言ったと同時にほんの数時間前のあの情事が一気に思い出されては顔を上げそのリョーマの顔を見た。
「な、なにいって……」
リョーマはにやりと笑って
「やっとこっち見た」
まったくこの人はと思った。
おかげで謝るきっかけをなくしてしまったじゃないか。