Instead of drink 《テニプリ越前 リョーマ》
第3章 夕暮れ
「…わ、私なんかの どこが、いいの」
小さく息を吸い込んで言った。言ってしまった。
自分から自分の欲望に飲み込まれていったくせに私はこの人に救いの手を求めたのだ。
…………女はずるい。
こういう時にこういう言葉を相手に浴びせて、さらに明確な答えを求めようとする。
自分を否定的に伝えながら、そうではないという相手の返答を待っているのだ。
そんなところは嫌だ、ずるい、わかっているのに。自分の安心感と安堵感、彷彿感を得るために彼にそれを求めているのだ。
がしゃとブランコが揺れる音を立てながらリョーマはため息をつきの手を離した。
離された手首をその位置から動かせないまま、はこくりと唾を飲んだ。どうも事態は自分が望んだものではなさそうだ、そう思った。
リョーマのため息が残影のように目に映りそうだ。
「あのさ」
だめだ、違う、やってしまった。
やはりリョーマがこの後口にすることは私の彷彿感を沸き上がらせるものではない。