Instead of drink 《テニプリ越前 リョーマ》
第3章 夕暮れ
嫉妬。私は彼女に嫉妬していた。
妬ましくて悔しくて。負の感情が頭のてっぺんから体全体に流れていた。もうこれ以上自分とあの子を比べたくないのにまるで拷問だ。自分に拷問を着せているのだ。棘に挟まれるもがき苦しむ痛さも爪を剥がされるような強烈な痛みも。
「桜乃ちゃんはかわいくて女の子らしくて、リョーマくんと…リョーマくんと歳も同じで、けど私は違って、かわいくなくて女らしくもなくて歳も離れててリョーマくんは私のことなんてなんとも思ってなくて」
「ストップ」
自己肯定感を自身でズタボロに崩した痛烈な叫びにリョーマがストップをかけた。
は僅かに顔から手を離す。
「まったく よく喋るね」
リョーマは手を伸ばし顔を覆いかけたままのの手首をつかみの目を見つめた。
「俺がアンタをなんとも思ってないってどういうこと」
暗い中でもわかるほどリョーマはの目を真っ直ぐに見てくる。
「…えっ…だ、だから それは」
だからそれは先程カラオケでの一件がまだ自分の身に起こっていなかったからだ。
リョーマが自分を好きだなんて思ってもいなかったし自分なんかダメだと思ってた。
まずリョーマの「恋愛対象」から自分は当然外れていると思っていた。……なれない、と思っていた。というか、まだ信じられない。
「俺はアンタが俺のこと好きだって知ってた」
の手首を掴んだままリョーマは言った。
「俺は気づいてるのにアンタは気づいてないってどういうわけ」