• テキストサイズ

Instead of drink 《テニプリ越前 リョーマ》

第3章 夕暮れ







「見てた」



そこに灯る街灯がチラチラと消えかかる。
ジジジという音とともになんとか灯り続けている。
いっその事消えてしまえばいいのに
そうすればこのリョーマの表情が見えなくなる、きっと。
があの時見ていたんだという答えにリョーマがどんな表情をしたか。しているのか。
一瞬目を見開いたのを見逃さなかった。
リョーマはの手首のあたりを握り言った。




「とりあえず立ってくんない?この体勢 結構疲れるんだよね」





を支え引くようにしてリョーマは体勢を整える。はその動作につられ地面に手をついて立ち上がった。
服についた土汚れを軽く払いながら握られているリョーマの手を振りほどきたかった。
振りほどいてその場から逃げ出したかった。
絶対、一生、口にしないつもりだった自分の行動。彼と同級生の女の子が一緒にいるところを隠れて、覗いて、息をころして
見ていたこと。
恥ずかしかった。
リョーマはゆっくりの手を離す。



「だから急に様子 変になったんだ?」



様子…変だっただろうか。
本当にそうだとしたら自分も相当嘘が下手だと思った。
この公園に入ってから、というよりこの公園が近づいてきた時から頭の中はそのことでいっぱいだった。
あの子がリョーマに恋心を抱いているのは知っている。
知っているからこそ辛かった。
自分よりずっとずっと、ずっと近くにいる彼女だからリョーマがいつかあの子のことを好きになってしまうのではないか、いやむしろもう特別な感情がでてきているのではないか。
そればかり考えていた。
自分はリョーマより年上だし、外見だってよくない。誰かと自分を比べては劣等感に苛まれその誰かの対象が竜崎桜乃という存在になればもう手の付けようがない致命傷となる。
その致命傷ともなる心の傷をなんとか治療してここまで来たのだ。

そして、数時間前……リョーマの気持ちを手に入れた。
彼は自分を好きだと言った。そして私の全てに触れた。
けれどまるでそれを覆すかのようなこの場所に続く道。
そして言ってしまった、自身がした行動。
私は醜い。嫉妬の塊だ。
はそう思いながら両手をぎゅっと握りしめた。


「あのさ」


リョーマは揺れが止まったブランコの鎖に触れながら低めの声を出した。




/ 28ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp