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Instead of drink 《テニプリ越前 リョーマ》

第3章 夕暮れ


少し先を歩くリョーマの背中を追うようには歩幅を広げていく。なんで自分はこんなに歩くのが遅いんだ、きっと今の自分の立場はリョーマの隣を歩いてもいいはずなのに。
自分の歩幅の狭さを恨みながら、無言で歩く。
リョーマの隣を歩いてもいい……?
果たして本当にそうだろうか?
リョーマの気持ちを知ることが出来たとはいえ、彼は制服を来た学生。
自分はもう既に制服を着ることは出来ないのだ。
どんなに彼に合わせようと努力をしても絶対に越えられない年齢の壁。
それは自分だけが彼を好きだと思っていたつい先程までずっとずっと悩んでいたことだ。
リョーマが何故、自分のことを思っていてくれていたかさっぱり検討もつかない。彼の周りには同級生も上級生もたくさんいるのに。

「なに考えてんの」

夕暮れの空がリョーマを見下ろし、茜色の夕日がリョーマの髪を照らす。黒の学ランの肩に夕日の光が当たり、逆光となった光はリョーマの表情を僅かに隠して。

「リョーマくん、あたし」

は立ち止まり、下を向いたまま声を発した。
リョーマくん、あたし その後に何を言えばいいのかわからないまま声を発したのだ。

「いいから 行くよ」

そう言葉を告げられ、リョーマの手が差し出される。
なんの迷いもなく、リョーマの意志とともに差し出されたその手。
はその手を見つめながら、ぽろぽろと流れ落ちる涙を抑えられずにいた。
今、目の前でリョーマが自分に手を差し出している。
その手を掴んでもいいと差し出している。

「また泣いてんの」

きっとリョーマは軽くため息をついただろう。
泣いてばかりの自分を見て。
ゆっくりとリョーマが履いている見慣れたテニスシューズが自分の所まで近づいてくる。
は顔を上げて、近くなったリョーマを見た。

「泣き虫」

そう一言呟いて、リョーマはの手をとり歩き出した。

「アンタ歩くの遅いんだからしっかり着いてきなよ」

また涙があふれる。一体何度泣かせれば気が済むんだ越前リョーマくん。
は言葉にできないまま、ただ涙を流して。
先程よりもずっとゆっくりになったリョーマの歩幅にきっちりと合わせながら夕暮れの道を歩いていった。
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