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溺れた先の光

第3章 2 不思議な本



分からないことは聞けば教えてくれるということか
喋る本は意外にも親切な本だと落ち着きを取り戻した私は早速使ってみることにした。

『ユース』

光るページから煙がもくもくとあふれ出しその煙が地面にたまると何かの形を成していく。

モコモコと不気味に動くそれを見ていると急にボンッ!!と軽い爆発音がした。
慌ててその場所から離れて身構える。
煙が薄くなっていく中、そこに見えたのは掃除機?だった。

こんな便利なものが存在するのか!?と未だ掌の上で宙に浮く本を凝視する。

打開策なんてないと思っていたため、この掃除機?の出現には正直感動してしまった。

私は早速薄汚れているこの部屋を本から出てきた掃除機?を使って掃除することにした。

喋る本はどうやら私の右手と一定の距離を保って宙に浮く性質があるようで、右手を動かしてもある程度邪魔にならない位置でフワフワと浮いている。

不思議な本だ、と感心しながら掃除機?のスイッチを探すも見当たらない。
『スイッチないならどうやって吸うの・・・なんでもいいから吸ってくれ』
と口に出す・・・すると

ブオオオオオオオオオオ!!!!!

と、凄まじい音で部屋のモノ全てを吸い込んでいく掃除機。

『ん!!!!?ちょっと!!!おかしいでしょ!!?』
慌てて『ストップストーップ』と言うも時すでに遅し・・・

部屋の中のものが何もない・・・
掃除機が吸い込んでしまったのだ。

埃も吸い込んで、確かに部屋は綺麗になったが・・・
使おうと思っていたベットもタンスもなくなってしまった。

この掃除機のどこにそんな吸い込める空間があるのか・・・
掃除機を握る手が汗をかく・・・

『しまう時はどうすればいいの?』

「・・・「キャンセル」デシマウコトガデキマス・・イチドノカイホンデツカエルノウリョクハヒトツマデデス・・・オナジノウリョクノ、シヨウカイスウセイゲンハアリマセン・・・マスター」

『キャ、キャンセル』

~ぼわんっ!~

なんだか拍子抜けする音で本が消えると、悪魔のような掃除機も一緒に消えてしまった。

何もなくなった部屋を見渡して私は思った。
しばらく寒い日がきませんように・・・と。

仕方なく床に寝転んで身を丸めてひんやりとした床の感触に気持ちよさを感じて、意識は遠のいていった。


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