• テキストサイズ

溺れた先の光

第3章 2 不思議な本




そこそこに綺麗な部屋を見つけた私はこれから過ごすことになる部屋の掃除をすることにした。

しかし、掃除用具なんて見つからないし
かといってこの汚い部屋で過ごすことも精神的に無理で・・・

手ぶらで何も所持品がない自分の姿にため息をつく。

困った・・・何か、何かないかとあたりを探すが見当たらない。
試しに自分の履いているズボンのポケットに手を入れてみる。
しかし、出てきたのは
掃除の役には立たない指輪が一つ・・・

頭ではそう思っているのに、なぜか体はその指輪を右手の人差し指にはめ、掌を上に向ける。

『テイク・・・』

勝手に言葉を発した口を押え、私は自分の掌から「ポンッ」と軽快な音と共に出てきた本に驚く。

本は掌に触れることなく宙に浮いたまま少し揺れている。

恐る恐るその本を開いてみると中身は人の顔写真と何かの文字が書いてあった。
一ページに一人ずつ載っていて、プロフィール帳のような感じになっている。
どのページをめくってみても書いてある記号のような文字は読めない。

何が書いてあるかもわからない本の出現に現状の打開策は見当たらない。
とりあえず本の最初のページに戻ってみることにした。

すると何かを書き込めそうな枠がある。
しかし書く物はない・・・
物は試しと指で「掃除用具」となぞってみるがやはり書き込めない。

もしかして、と声にだしてみる。
『掃除用具』
すると枠に読めないが文字が浮かび上がる。

「スキャン、シマスカ・・・マスター」
目の前の本から急に聞こえてきた機械的な声にびっくりして私は勢いで返事をする。

「ガイトウ1、ページヲヒラキマス・・・」
喋る本が今度は勝手にページをめくりだす。

目の前で起きていることにジワリと気持ち悪い汗をかく。
パラパラとめくられていくページが、眼鏡をかけた黒髪の女の子のページでとまる。

ぼわーん、ぼわーんとゆっくり光るページに私はどうしていいのかわからず、聞いたら教えてくれないかなとドキドキしながら本に聞いてみる。
『これどうしたらいいの?』

「ノウリョクヲツカウバアイハ「ユース」、ホンヲトジルバアイハ「キャンセル」・・デス、マスター・・・」

/ 86ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp