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溺れた先の光

第10章 9 事件



「さぁ、冷めないうちに飲んでみて?この紅茶、すごくおいしいんだよ」
男は少し匂いを楽しむとそのまま紅茶を口に入れる。

背中の汗が少し引いたことに安心した私は同じように紅茶を口に入れる。

『上司を待たせているので・・・』とカップをテーブルに戻して占いを始める

いつも通り勝手に動く手が不自然にならない様ふるまう私は、だんだんと体に違和感を感じ始める。

それと同じタイミングで今まで黙っていた男も口を開く

「父が君のファンで・・・話にしか聞いたことがなくってね。是非一度会ってみたいと思ってたんだ・・・だけど、君はもうあの地下街にはいなかった」
ふわふわと頭が軽くなってくる気持ち悪い感覚の中、喋り続ける男に視線も向ける余裕がない。

「そんな中、調査兵団にいるって噂を耳にしてね。寄付をすることをエサに君をここへ呼ぶことに成功した・・・」

ゆっくりと立ち上がる男が占いを続ける私に近づく・・・

「思っていたよりもずっと・・・僕の好みだ・・・・」
横に座った男が耳元で囁く・・・そして男の口が私の耳たぶをかじった。

『ッ・・・・!!?』

突然の気持ち悪い感触に何とか耐えた私は、もうすぐ書き終わる占いの時間を稼ぐ

『私を、ここへ呼んで、何をするつもりですか?・・・お父様の話から想像していた私はどんな人間だったのですか?』
何でもいい、話をかけろ・・・
後一行・・・

少しの沈黙の後に男がニヤリと笑う

「父は娘にしたいと言っていた・・・だから今日はその父の願いを叶えてあげようと思って・・・」

占いが書き終わると同時に一気に流れ込む気持ち悪い感覚・・・集中出来ずにシエロも消える・・・
とっさに左手で頭を抑えると、男が私の右手を掴んでペンを取り上げると、その指を口に含む・・・

『ぁ・・・ッ、何を・・・』
ぺろぺろと嘗め回すその舌に吐き気を感じながらも、身体はふわふわと気持ちよくなっていく

「地下街出身でも私は構わないよ・・・結婚してしまえば君も貴族だ・・・うれしいだろう?」
気味の悪い笑みを浮かべながらソファーへと私の体を押し倒す

その揺れがさらに気分を悪くさせる

あまりの気持ち悪さに体は抵抗できない

歪む顔に男は喜びの表情を浮かべた
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