第8章 7 交渉(リヴァイ)
馬車が走り出してからそれなりの時間が経つ
もう追いかけてきてはいないだろうとエルヴィンが口を開くと、俺の隣にいた緋涙から大きな息が漏れた。
『はぁー、疲れた・・・』
ぐったりと体を背もたれへ預ける緋涙。
すると、はっとしたように体を起こすと『私はこれからどこで暮らしたらいいの・・・』と青い顔で呟く。
「エルヴィン、こいつを調査兵団へ入団させろ。こいつは“武器”だ・・・間違いねぇ」
何でかはわからない
だが、こいつがあの占いの武器だと俺はなぜだか確信してしまった。
その言葉にエルヴィンと緋涙は揃って俺の顔を見る
「本気かリヴァイ・・・私には彼女が巨人と戦えるような女性には見えないのだが・・」
『調査兵団ってなにする兵団なの・・・』
と互いに不安そうな顔をしている。
「こいつの面倒は全て俺がみる。それなら問題ねぇだろう」
そう言うとエルヴィンは「問題はそこじゃない」と言ったが、俺の意見が変わらないのを悟ったのか、最後には諦めて承諾した。
当の本人緋涙は納得がいかない様子で、『だからなんで急にそんな調査兵団に入らなきゃいけないの!!』と食って掛かってきた。
「ならどうする、あの大男の所へ戻るのか?それともここで野たれ死ぬか?俺と一緒に調査兵団へ入団するか・・・選べ、今ここで」
喚く緋涙にそう言って俺は顎を掴んでこちらを向かせたまま返事を待つ。
『わ・・・たしの部屋・・は?』
「清潔な部屋を使わせてやろう」
『じゃあ・・人攫いからまた狙われたら・・?』
「ああ?守られるほど弱いのか?」
『・・・・また狙われたら・・?』
「しつけぇな、ならそれも俺が身の安全を保証してやる」
『おかね・・・』
「くどいぞ!てめぇの事は全て俺が責任をもってやるって言ってんだ、黙って俺に従え」
掴む手に力を入れて睨みつける。
『は、はい・・・従います・・・』
「最初からそう言え」
やっと大人しくなった緋涙から手を離しエルヴィンに「交渉成立だ」と伝えると「あ、ああ・・・」とふやけた返事が返ってきた。