【R18】Morning Glory Fizz【赤井秀一】
第82章 異世界から来た理由※
秀一さんの顔を見ると
話してもいいと顔に書いていて
私はゆっくり口を開いた
『私、前に冗談で言った事あるんですけど
異世界から来たのは本当なんです』
一度、冗談ぽく
降谷さんに言った事があった
降谷さんの車で出かけたあの日に。
『本当に信じられないと思うけれど
本当の事なんです。
私がいた世界に、
この世界の物語がありました
秀一さんも、降谷さんも…
皆んなただの登場人物で…
私はその物語を読んでました』
私は一度、一呼吸置き
コーヒーを飲み干した
降谷さんは黙って話を
聞いてくれている
『だから、降谷さんの事も知ってました』
降「…にわかに信じ難い話だな…
それで…どうして…?」
難しそうな顔をしながら
どうして異世界から来たのか
理由を促す様な口振りの降谷さん
『初めは夢に近い感覚だったと思います
元いた世界の私は眠っていました
私はビルの上から
身を投げて辛うじて
病院で一命を取り留めていたんです』
秀一さんは口を挟まずに
聞いていてくれている
『ある日一度、目が覚めたら
元の世界に帰った事があったんです…
その時は病院のベッドの上で
何日もまともな食事をしていない体で…
私は、半年も眠っていたそうです』
元の世界で目が覚めた時…
そう、純黒の悪夢の…
東都水族館の観覧車の事故に
巻き込まれた時だった
降谷さんは
顎に手を当てて考えていた
『…それから死んだはずの元カレが
現れて、選択肢をくれました
元の世界で生きるか
こちらの世界で生きるか…
私はこちらの世界を選びました』
降「どうして…こちらの世界を?」
『元の世界にはもう、愛する人は
誰一人居ませんでしたから』
秀一さんは私の話を聞きながら
キッチンに立ち3人分の
コーヒーのおかわりを淹れてくれている
降「ふむ…元カレの強い思いが
貴女を此処へ連れて来た、と。」
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