【R18】Morning Glory Fizz【赤井秀一】
第70章 さざ波の夢
夢を覚まさなくちゃ…
私は立ち上がって
冷めた砂浜を歩き始めた
でも行く宛なんて何処にも無くて
直ぐに立ち止まってしまう
ぼーっと沈みかけの太陽を眺めた
『…帰りたい……帰りたいよ…』
急に不安が募って
ぽつりと一粒の涙が頬を伝う
赤「お姉さん、ひとり?」
聞き覚えのある声に
ハッと顔を上げて
声がした方を向く
『しゅ、いちさん……わっか…』
そこには秀一さんが立っていて
目で見て思った事をつい、口にしてしまった
そりゃあ、10年前なんだから
若いのは当たり前…
お姉さん…って呼んだよね
あ、そうか、
この頃の秀一さんは私より年下…
てゆうか、ナンパ?
チャラい…チャラすぎる…
赤「何故、俺の名前を知っている
何処かで会ったか?」
やっば…
つい、名前を呼んじゃった
10年後に会います、とは言えないな…
私は俯いたまま
どうしようかと頭を悩ませた
赤「無視はいけないな」
『ごめんなさいっ…あの、ちょっと
いや、大分色々ありまして…
頭が混乱しているというか、何というか』
慌てて言葉を並べると
秀一さんはフッと笑った
赤「まあいい、
色々あったから泣いていたのか?
何があったんだ?」
そういえば、急に不安になって…
でも、秀一さんの顔を見たら
そんな事も忘れちゃって…
『何というか…家に帰れなくて…』
赤「迷子か」
初めて秀一さんと会った時と
同じやり取りをしたのを思い出して
また目頭が熱くなった
赤「慰めてくれる男もいないのか」
そう言いながら
頭の上にぽんっと手のひらを
置いて撫でてくれた
その優しさが心に沁みて
目に溜まった涙が溢れ出た
赤「泣くな」
ふわりと抱き寄せられ
胸を貸してくれる
一頻り泣いて
落ち着きを取り戻し
そっと体を離した
『…ごめんなさい…』
赤「構わない。
それより、この近くのホテルに
宿泊しているんだが退屈でな。
時期に日も暮れるから
部屋に遊びに来ないか?」
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