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転生したら何故かめっちゃモテるんですが?

第2章 フラワータウン



 頭痛のする頭を抑えながらぼんやりとそんな事を思った。
 自分は人間で。けどこの世界にいる者達は人間など居ないと言われその姿をまざまざと見せられて。…いや、そもそも"この世界"とはなんなのか?自分のいた世界とは違うという意味合いのその言葉に名前は頭を抱え小さく呻き声を上げた。

 ーーつまり……これって…。

「転生……しちゃった?」
「まぁ、そういう事になるんちゃうかなぁ」

 ぽつりと呟いた独り言に、目の前の男が些か強く頷いて見せた。それによりふわふわとした不確かなものがはっきりとしてしまった。自分は今"異世界に居る"のだという事が。
 そもそも異世界だと言う要素は面白いぐらいに揃っては居た。
 目の前にいる男の服装も、この薔薇園も、先程見た人外も。
 だがしかし名前の中ではっきりと"異世界に来てしまった"と言う事実にしたくなかったのは超がつくほどの"現実主義者"だからであろう。
 両親が事故で亡くなる前に言っていた。

『アンタは小さい頃から疑り深い性格だったよ。サンタさんもなにも信じないし。まーったく子供らしさの欠片も無かったね』
『そうだなぁ。枕元にあったプレゼントを見て喜んでるお前に、サンタさんからだよ、って言ったら、サンタさんなんて居ないよ!なんて言うし』

 溜め息を吐きながら、もう少し可愛げのある子が良かったねぇ、なんて愚痴を零していたのを今でも名前は鮮明に思い出せる。それからほんの少し後に、買い物に出掛けた両親はトラックに正面衝突されあっさり死んでしまった。
 葬儀の最中、名前は涙ひとつ零さなかった。現実では無いと思っていたからだ。つい二三時間前まで普通に話していた両親が、死にました、なんて言われても呆ける事しか出来ない。挙げ句両親の遺体は損傷が激しくとても見せられないと言われた。
 両親が最期に言った言葉は"もう少し可愛げがあったらいいのにね"だった。こんな事になるのだったら両親が喜ぶようにもう少し可愛げのある振る舞いをしていたのに。
 誰も居なくなった広い家。そこで名前はやっと涙を流した。一人になった名前には酷く広くて、酷く寂しく、酷く冷たい家のように感じた。

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