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転生したら何故かめっちゃモテるんですが?

第2章 フラワータウン



 ぱちん、と。乾いた音が風に流されることなくしっかりと響いた。男が指を鳴らしたのだ。掲げられた男の手。その男の手が指を鳴らした途端、その腕から下へとみるみる姿が変わっていくではないか。
 瞬きを数度した後、男の姿は人間とはかけ離れたものへと様変わりしていた。
 人のような形をして立ってはいるが上から下まで緑の葉や蔦で覆われており、それを綺麗に飾り付けるように赤や桃色の薔薇が散りばめられている。

「うっ、嘘……なにこれ…夢…?」

 夢ではない、なんて先程は言ったが目の前に突きつけられた信じ難い光景に現実逃避せざる得なかった。目を大きく見開きながら名前は無意識のうちに後ろへとずり下がった。
 驚きと、目の前の人外による恐怖によりあまり力の入らない腕を叱咤して無理矢理動かしずりずりと尻で後ろへと下がっていけば、目の前の人外は、あぁ…そんなに怖がらんといて、などと言葉を掛けてきた。
 先程の甘く優しい声が目の前の人外から聞こえてきて、ほんの少しだけ安堵するも、まだ完全には安心しきれない。
 こくりと喉を鳴らし相手をじっと見つめれば目の前の人外は腕を掲げ乾いた音を響かせた。先程同様、指を鳴らしたようだ。葉や蔦まみれの手でよく鳴らせたものだ、なんて感心しているとあっという間に先程の整った顔立ちの男が現れた。
 手品かなにかにしては酷くリアルすぎるし、そもそも人間が人外になる手品なんて聞いた事がない。

「どう?分かってもらえた?君は人間やけど、俺は人間ちゃうねん。いや……俺だけやなくて、この世界の住人は皆人間とちゃう。"人間の姿をモチーフにした人外"やねん」

 極当たり前のような表情をしながらつらつらと話す目の前の男。先程まで蔦や葉、薔薇にまみれた人外などには到底見えない。しかし、先程目でとらえた情報ははっきりと脳にこびりついいている。ここまできて信じないとか、現実逃避とかはさすがに無理があるというものだ。

「…わ、分かった……分かったので、少し頭を整理させてください…」
「ん、せやな。こんなん急に言われてもビックリするもんな。ちょっと時間おこか」
「ありがとうございます…」

 小さく礼を述べた名前に男は、構へんよ、と笑って見せた。やはりどこからどう見ても、人間。なのに人間ではない。
 
 ーーなんでこんな事になったの…?

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