第2章 フラワータウン
「あの、ここは何処ですか?植物園…?薔薇園?……にしては、大きすぎるような気がするんですけど…」
「えっ…君、それほんまに言うとるん?」
「え?え、ええ…至って真面目に聞いてますけど…」
信じられない、と言った様子で問うてくる相手に名前は眉を寄せつつもしっかりと首を縦に振った。何故そんなに驚いているのか不思議に思いつつも相手の言葉を待てば、男は少しだけ考える素振りを見せたあと、あぁ…それでか、と意味深な言葉を呟いた。いったいなにが、それでか、なのか分からない。
訳の分からない状況により気持ちが急いている名前にとって男のその素振りは酷くもどかしいものであった。
急かしたい気持ちをぐっと堪えて男の言葉を待っていれば、伏し目がちになっていた視線が名前へと向いた。長いまつ毛を数度忙しなく上下させた後、男はゆっくりと口を開いた。
「ここはな、フラワータウンやねん」
「ふ、ふらわーたうん?」
「そや。…けどまぁ、そう言うても君にはぴんとこうへんと思うけど」
「ま、まぁ……そうですね」
値踏みをするような男の視線に冷や汗をかきつつも素直にこくりと頷けば、やっぱりな、と言う表情を目前の彼は浮かべた。一人で納得していないで出来れば早急に教えてほしい。
そんな言葉をぐっと堪えつつもーーしかし目でそこはかとなく訴えれば、それを察した男はゆっくりと口を開いた。
「なにから言うたらええか分からへんのやけど…とりあえず聞きたいことは……君、人間やろ?」
あまりにも深刻な表情と声音で言うものだから何かと思えばあまりもおかしな質問を投げられた。そのおかげで上手く言葉も返せずやっとの思いで口から滑りでた言葉は、え?、である。
ーーえ、な、何この人……普通の人かと思ったけどもしかしてナリキリコスプレイヤーさん?
思わず頬をひくつかせそんな事を思っていると、あー…せやな、とりあえず見てもらわんと分からへんよな、なんて意味深な言葉を口にした。
見てもらうって、いったいなにを?そんな事を思い訝しげに眉を寄せれば不意に男はゆっくりと立ち上がり左手を掲げた。いったいなにをするのかと、名前の視線が彼に注がれる。