第14章 親心
凪の父親から聞いた内容は
蛭魔にとって想像を絶するものだった
6歳の子供にとって残酷とも言える"選択肢"だった
どれ程傷付き、どれ程苦しんだろうか
「…凪は……アンタらを守る為にアメリカに行ったっつーことだな?…だが何故今戻ってきた?手放すなんて考えられねえがな?」
「亡くなったんだよ…先月ね…それからすぐだったかな…娘が初めて僕達に言ったんだよ…《お父さん、お母さん…帰りたい》ってね……ずっと言わなかったんだ…あの人が生きている間は一言も…一言も弱音すら吐かず、泣かなかったあの子が…初めて…僕達に言ったんだ…助けてもやれず…僕達はあの子に何一つしてやれなかったのに…まだ、お父さん、お母さんと呼んでくれたことが嬉しくてね…勿論だが、向こうの人達は大反対したみたいでね…娘が言ったらしい《遺産もいらない、何も要らない、私は産まれてからずっと小早川凪です》って……初めて啖呵を切ったらしい……遺産を放棄すると言った途端だよ…手のひらを返してきてね…あの子は直ぐに帰ってきたよ……さて、少し長話がすぎたかな…戻ろうか」
そう言って入ろうとした時だった
「今は幸せな顔してるじゃねえか…その時の選択をアンタらは悔やんでるかもしれねえ…後悔、罪悪感、あるかもしれねえ…ただ、今のアイツは…すげえ幸せだろうよ」
「……ははっ…君なら…あの子を幸せに出来るかもしれないね…ありがとう」
「ケケッwったりめぇだ…アイツは俺の夢に必要不可欠だからな?勿論…その1歩が…クリスマスボウルなだけだ…この先手放すつもりはねえよ」
「…頑張りなさい…応援してるよ」
「!!!!っ…あたりめぇた…」
蛭魔もまた…父親の優しさを知らない家族の温かさも
それを知ってか知らずか
その行為にびっくりした蛭魔の顔を不思議そうに見る凪の父親
「すっかり冷えてしまったね(苦笑)」
「ケケッwさっさと戻るぞ糞親父w」
「そうしようか(苦笑)」
一方リビングでは……