第25章 キス…した、い。
とある島へログポースが貯まるまでの二日間滞在する事となり、午前中は買い出しに明け暮れていたエリナは夕方、少し早いがバーのカウンターで一人酒を呑んでいた。
ここのマスターはインスピレーションで良い人だと感じ、暫く話をしていたらその気の良さにすっかり心を開いていて身の回りの話や愚痴をどっぷり聞いてもらっていた。
「ほんとにさ〜男ってわかんない!」
ドンとカウンターに置いたジョッキはもう何杯目だか本人は皆目がつかない。
「ほっほっ…お前さん男の扱いは嗜んでそうだけどなぁ」
立派な白い髭を生やしたマスターは微笑みながらグラスを拭いている。
「掌で転がすのは得意だけど、一部例外があるのよ」
唇を尖らし、ふてる。
「ほう、じゃあ彼はお前さんの人生にとって貴重な経験をくれる必要な人なんじゃな」
マスターの言葉が耳に残って。
…必要な経験。
ってあれしかないじゃん⁉
辿り着いた答えにエリナは肩を落としながらもゆっくりと口を開いた。
「ねぇ、マスター…変な事聞いていい?」
「もうこの年じゃちょっとやそっとの事じゃ驚かんぞ」
「男って、結局誰でも性欲の対象になるのかな」
マスターは瞳を僅かに見開いて少しの思案後、答えた。
「ほっほっ…そりぁ子孫を残すのは男の本能じゃから誰とも対象と思う奴は多い」
「本能ねぇ…」
「まぁただ大事な人というのは別でね。大切なら大切な存在程、男は慎重に思ってそう簡単に手を出さないものだよ」
「……ふーん」
エリナはグラスに浮かぶ氷をぼーっと見つめていた。
「お前さんはとても大事にされているんだね」
「えっ、なんで⁉」
「ほっほっ…年寄りの勘じゃよ」
大事にされている。
果たしてその言葉が合っているのかどうか。
考えても答えが出ないからとりあえずアルコールのおかわりをマスターに頼んだ。