第24章 まだ手は出さない…お前から求めるまでは、な。
「おい、開けろ」
部屋に出現させた植物へ自己満足に浸っていたのにその声に心臓を掴まれるような思いがした。
「な、なによ」
息を飲んで扉を開けた途端ズカズカと部屋へ入ってくるロー。
部屋の隅にある花や植物の鉢を一見してから私をギロリと睨んだ。
「俺の許可なしに物を増やすな、邪魔だ」
「邪魔〜⁉」
聞き捨てならない台詞。
邪魔だなんて。
「この船には自然を感じられる物が少ないわ。いい?植物はその部屋の気を良くしてくれるし見ているだけで何より癒されるでしょう?」
「………手入れが面倒な上処分に困る。潜水する時はどうする?廊下の物なんか海に流されるぞ」
エリナはローに意味深く笑ってみせた。
「バカね…幻覚よこれは」
エリナが花の鉢へ指先を向けると、瞬時にその姿は消えた。
「手入れも何もないわ。これはずっとこのままの姿で枯れもしないし育ちもしない。便利でしょう?」
その説明にローは顎に手を触れ何やら思案している。
「じゃあ栽培や収穫などは出来ねぇのか」
「出来る訳ないじゃない、あくまでもその姿を保っているだけよ」
「そうか」
「なんで?」
その質問にローは少し間を置いた。
「いや…薬草の研究をしたいとは思っていた」
「おや、医者らしい発言」
「俺は医者だ」
「まぁ…でも私の魔術は植物に由来しているから、成長を促したり栄養を与えてあげる事は可能よ?滅多に枯らせないわ」
Vサインを向けるエリナをジッと見据えるロー。
「…そうか」
きっと次の島についたらローの部屋には薬草の鉢がたくさん並んでいるだろう。