第22章 ほっときゃあとんだ言われようだな。
「そうだよね」
「あ?」
手が震える。
自分でも分からない感情が心の中で音を立てて崩れて行く。
「私馬鹿みたい」
喪失感、後悔。
淡い期待は脆くも消える。
「てゆーか言わせてもらえば!そっちこそなんでキスなんてするのよ⁉どうせ私をからかって遊んでたんでしょ⁉」
「は?」
「なら私が男と話してたってローに関係ないじゃん!このやり○ん下衆男!」
顔は真っ赤、心臓はバクバク言って目にはうっすら涙が浮かぶ。
こんな顔本当だったら絶対見られたくないのに。
でも溢れ出る気持ちのストッパーを外したら、理性なんてもうボロボロと崩れ去った。
「…意味わかんないよ…あんたにとってどうせキスの一つや二つくらい軽い気持ちでも私は……っ」
眉根を儚くも寄せギュッと唇を噛み締める。
ローはただエリナを見つめていた。
そして盛大な溜息を漏らした。
「お前この野郎…ほっときゃとんだ言われようだな…まず二つ勘違いしてる」
いつの間にか食事を終えたのか彼は水をぐっと飲み干し静かに告げた。
「まずお前が思ってる事は、何一つしちゃいねぇ。次から次へと女は寄ってくるが興味ねぇし願い下げだ。知らずに付いたこの匂いだって不快でたまらねぇ」
「え……」
「あともう一つ、お陰様でこっちはお前が現れてから調子が狂ってんだ。からかって遊ぶ余裕があればもっと楽なんだろうな」
ローは自嘲気味に笑った。
「何それ…どういうこと…?」
エリナは理解出来ず戸惑う。
そして頭をフル回転させてある予想にたどり着くが、時既に遅し。
「お前今墓穴掘ってんの知ってるか?」
ニヤリと笑みを浮かべるロー。
エリナは額に嫌な汗が出始めていた。
「お前のそんな顔は初めて見たぜ。おかげでお前の気持ちはわかった」
「まっ、待ってよ⁉そういう事して来てきたんじゃないの⁉」
「俺はやってねぇ……お前、俺が好きだろ」
「…っ⁉」
そんな決定的な事を言われては。
何て答えたらいいか分からないじゃないか。
「だったら…どうすんの」
声にならない声で呟くのが精一杯だった。
「こうするさ」
「っ!」
腕を引かれローの元へ引き寄せられる。
温かい彼の温もりを感じたと思えば、唇は塞がれていた。