第22章 ほっときゃあとんだ言われようだな。
数時間前のローとの言い合いを思い出しては、やはりそれも納得がいかない。
情報収集?
誰のせいで、ままならなかったと思ってんのよ。
「あんたのせいでしょーが!」
星を映し瞬く海に向かい、精一杯叫んだ。
「何やってんだ」
突然響いた聞き慣れた低く澄むその声に肩がびくっと震える。
「ロー…気付かないなんて不覚」
振り返ると闇の中酒瓶片手に佇むローがいた。
全く気配を感じなくて。
「聞いてたの?」
「さぁな」
「…あっそ」
ぷい、と顔を海面に戻し突然の顔合わせに目が泳ぐ。
嫌な沈黙を破ったのはローだった。
「腹減った」
「は?」
「何か食いてぇ」
「……」
全く私って世話好きでいい奴だ。
自画自賛しながらエリナは冷蔵庫にあったもので適当に作った夜食をローの部屋へと運んでいた。
「入るけど」
ノックをしドアを開けると、本から顔を上げこちらを見たロー。
本にしおりを挟んでソファにどかっと腰掛けた。
「有難く思え」
不貞腐れながらソファの前のテーブルに夜食を置いた。
ローに近づいた途端、鼻をつく匂い。
「うわ…香水くさ」
すでにもぐもぐと焼きおにぎりを頬張るローは片眉を上げる。
彼からは女性がつけるようなキツイ香水の香りがぷんぷんしていた。
ああ…、なんだ。
そうですか。
それが何を表しているのか。
まるで糸が切れたように、エリナは浮かれていた気持ちが一瞬で醒めた。