第21章 そしてあいつに嫌われた。
その日の晩。
ローとペンギンは街の繁華街を散策していた。
客引きの男女や露出の多い女がネオンきらめく街並みにそこら中溢れかえっていて、一体何組の女が声をかけてきただろう。
とりあえず話は聞いてみるものの、欲しい情報は得られなかった。
「昼間武器商人が言ってた事本当なんすかね〜」
ペンギンがキャップをかぶり直しながらローへちら、と目を配る。
「中々骨がある情報だと思ったが…」
ローもずっと腕を組んで険しい顔つきのままだ。
二人はただ飲み屋に出入りしているわけではない。
人が集まる、特に夜に群がる場所と言うのは情報を得るにはとっておきの機会だという事を海賊なら皆わきまえているだろう。
海賊をはじめ闇ルートで商売する者やギャンブラー等、不特定多数の人間がそこをホームとして裏の情報が飛び交っている。
何軒か飲み屋をはしごしてもジョーカーに関し有力な情報を掴めないでいた二人に女が寄って来る。
「お兄さん、いい男ね」
ローを見つめ肩に頬を寄せて露出した白い肌を密着してくる女。
きつい香水の香りにローは鼻が曲がりそうで眉間に皺を寄せる。
これまでの店でも健全な飲み屋なのに席に着くなり女が寄って来ては適当にあしらってを繰り返して来ただけに、性的サービスを提供している店の勧誘は内心うんざりだ。
最近は性欲処理としてさえも興味が湧かない。
「うわッ…すげぇ乳…」
鼻のしたを伸ばすペンギンに呆れ返る。
「ハァ…いいぜ行って来いよ、今夜はもういいだろう」
神様のお許しにペンギンは訪れた幸運を噛みしめる。
「マジっすか⁉キャプテンも来るっしょ?」
相変わらず密着している女が目を細めてこちらを物欲しそうに見つめている。
「俺はいい、興味ねぇ」
「えぇ⁉どうしたんすか⁉珍しい」
女の手をパシッと振り払らった。
ペンギンは仰天している。
「やん…つれない人ね」
目当ての獲物を取り逃がし女は若干肩を落とすも、すぐさまペンギンの腕を組みニコッと微笑んだ。
「ま、貴方もこの人と比べちゃ何だけど、中々いい男ね…サービスするわよ」
「キャプテン悪いっすね、自分だけ…、行ってきまーす♪」
その顔のどこが悪いと思ってる。
ペンギンはもう崩れた表情なんてお構いなしにデレデレしながら奥の店へ消えた。