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医者と魔女

第20章 意味わかんない。







「そろそろ僕行かなくちゃ」

時計を気にした青年に、終いにはこの手に取って好きに観覧していたカメラを名残惜しそうに返した。

「ありがとう。とっても楽しかったわ」

エリナの満面の笑みに青年も優しく笑った。

「君…なんか思いつめた顔していたから…笑顔になってくれて良かったよ」
「…っ!」

席を立ちスタスタと出入口へ向かう青年の後ろ姿を目で追う。

はは、観察力はやっぱり流石のものね。

楽しかった出会いの訪れと別れに、気分はスッキリして穏やかな気持ちでカップを口へ運んだ。

ティーはすっかり冷めていた。








植物園を後にした頃には日もすっかり沈んでしまいとりあえず一度船に戻ろうと決めた。

ローがいませんように。




見えてきた黄色の船。

乗り込むとあまり人の気配を感じなかった。

みんな出かけてるのかな…

じゃあローもいないな!

安堵しつつ、自室へ一直線に向かう。
まるで隠れるかのように。

部屋まで後少し、

なのにエリナの足は止まってしまった。

「ロー…」

丁度部屋から出てきたローと鉢合わせてしまった。

今更隣同士の部屋を恨んでもしょうがないが、全くなんて最悪なタイミング。

一瞬合ってしまった瞳をすぐに逸らしてさっさとその場をやり過ごそうと決めこむ。
昼間の事件依頼初めてローを見て覚悟はしていたけど想像以上に顔は赤くなってしまうし、変な汗が出てくる。

「ペンギンから聞いたろ、情報があれば報告しろ」
「………」

情報収集どころじゃないんだよこっちは!

「その様子だと…何もないようだな。まぁ当たり前か、男とイチャつくので忙しいお前には」
「はぁ⁉」

そこで私は初めてローの顔をしっかり捉えた。
聞き捨てならない台詞に。

「イチャつく?私が?何それ」

全く身に覚えのない言われが勘に障って。

「は…自覚なしか。てめぇの身で考えろ」

ローの視線は鋭くて冷たい。
エリナは訳が分からなかった。
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