第19章 ここまで頼んでないっ!
先程の軽く触れるだけのキスとは違う、荒々しく唇を貪るロー。
胸をドンドンと叩いて抵抗するも、びくともしないし後ろは壁、左右にはローの腕。
逃げ場はなかった。
せめてもの抵抗にギュッと唇を閉ざしていたが、ローの手が太ももをそっと撫でた瞬間エリナはつい小さく声が漏れる。
その唇が僅かに開いた隙に、ローの舌を侵入を許してしまった。
「ンふ…ふっ…!」
まるで生き物の様に口内をうごめく、その舌。
逃げる私の舌を追いかけては吸われ、歯列をねっとりと舐め上げられる。
上顎を舌先でちろちろと舐められれば、エリナはついビクッと肩を震わす。
「ふぁッ!んん…ろぉ…ッ」
抵抗を忘れたエリナに気を良くしローは壁をついていた右手をエリナの腰へ。
全身の力を奪い立っていられない様なキスにエリナはその腰に回る手に全体重を預けている。
「ん…っ、ンふっ、ふぁ…」
深く深く角度を変えては奥まで貪られていくその行為。
たまにチクリと当たるローの顎髭の感触と舌の熱さを感じるしかなかった。
「んん…っ、はあ…っ」
名残惜しそうに唇は離れ、二人の間をどちらともつかない銀の糸が結ぶ。
顎まで伝うその唾を最後にぺろっと舐め上げられる。
やっと解放され、エリナは限界の肺へ大きく肩を揺らし空気を送り込む。
もうその頃には立っていられなくて、壁を伝いドサリとその場へ座り込んでいた。
口元を淫らに汚す唾液さえ、そのままに。
「ふっ…刺激が強すぎたか」
濡れた口元を手の甲で拭ってエリナを見下ろすロー。
その様子が酷く色っぽくて悪戯で、エリナは生唾を飲む。
未だ息も整わず涙目でローを睨むという抵抗しか出来なかった。
「なんだよ…もっと欲しそうな目だな」
「ちが…」
涙を浮かべた上目遣いは酷く扇情的で寧ろ逆効果でさえあって、ローは口の端を釣り上げる。
「いつまでそうしてるつもりだ」
短かく問いてから、地面に投げ出されていたエリナの買い物品を掴みローはその場を去った。
エリナは暫く何も考えられなくて、その場に座り込んでいた。