第19章 ここまで頼んでないっ!
固まるエリナを余所にローは男らへ鋭い眼を飛ばす。
「お前ら…早く失せろ、死にたいのか?」
効果的面なその眼光に屈強そうな男らも尻尾を巻いてそそくさと逃げ去った。
未だ口をパクパクさせているエリナにローは楽しそうに肩を震わす。
「くくく…顔真っ赤だぞ」
確かに自分の顔から湯気を感じるし、とてつもなく熱い。
「こっ、…ここまで頼んでない!!」
やっと口に出来て。
エリナは涙目でローを睨み付けた。
「なんだよキスくらい。こうでもしねぇとしつこいだろ?」
確かに奴らはしつこかったし、軽く痛い目を見せてあげる事も出来たが両手の荷物がその気を遠くさせていた。
だからローを見つけ、利用したのに。
なんでキスされる事態なんだ。
「お前さては…初めてだったか?」
フレンチなキスで口をパクパクさせながら赤面するエリナの様子へ、ある予想に辿り着いたローはますます楽しそうに笑う。
「〜〜〜〜!!!」
ぶっちゃけ図星で。
声にならない声で、ただひたすらローを睨みつける事しか出来なかった。
「お前分かりやす…くくく」
「ッ…」
恥ずかしくて目に涙が浮かんでくる。
完全に馬鹿にされている。
「それにしても意外だな…じゃあこれはどうだ」
妖しく笑ったローに腕を引っ張られる。
薬屋の脇の薄暗い路地へ。
「ちょ…!」
コンクリートの壁に背を追いやられ、ローの両腕が私の顔の左右に突き立てられている。
両腕で阻まれ行き場を無くした体は身動きが取れずただローの顔を見つめるしか出来なかった。
心臓が止まる。
「こんなのは…経験した事ねぇだろ?」
その妖艶で挑発的な笑みを最後に、再度口付けられる。
「んっ…!」