第19章 ここまで頼んでないっ!
目の前に立ちはだかる男ら数人。
下品な笑みを浮かべこちらを舐め回すように見ている。
いわゆるナンパだった。
とんだ通行の妨害者にエリナは盛大にため息を吐き男らの間を割って突き進む。
「悪いわね、今それ所じゃないの」
両手には買い込んだ荷物。
重いんだから邪魔しないで。
「おいおい待てよ、まぁ悪くはしねぇぜ?」
男の手が肩に触れ、エリナは足が止まる。
しょうがないなぁ。
そう思った時だった。
少し先に目に入ったローの姿。
薬屋の前で足を止め店内を覗いていた。
あの容姿と身長、すぐ分かる。
良い所に!
エリナはひらめき、ローの元へあっという間に駆け寄る。
「あ?なんだ」
気持ち悪い笑顔で駆け寄ってきたエリナを不審に見つめるロー。
(しー!)
口元に指を立て、アイコンタクトを向ける。
「悪いけど、あたしの彼氏なの。どっか行ってくれる?」
するとローと腕を組み体を寄せるエリナ。
エリナを追って来た連中にローは事の成り行きを把握した。
「ああ?彼氏だぁ?」
男らはせっかくの上玉な獲物を逃がすまいと登場した彼氏へ鋭い目線を向けている。
「そうよ、ねぇ?貴方?」
小さくウインクを向け、話を合わせてとローにお願いする。
頭の良いローは容易く空気を読むも、
「…ッ、⁉」
エリナは何が起きたのか暫く理解出来なかった。
気づけばローの顔が目の前まで近づいていて、顎にチクっと髭が触れる感触がしたと思えば口付けられた。