第19章 ここまで頼んでないっ!
それから数日。
島が近づいて来た報せにクルー達は浮き足立っていた。
「今回はペースが早いが、やっぱり島への上陸は良い気分転換になるな〜」
嬉しそうに微笑むシャチを横目にエリナは確かつい数日前島を出たばかりだったと思い出す。
しかし未知なる島への上陸は興奮して、気分が上がるのは同じだった。
珍しい植物や食材あるかな…
「やっぱり船旅は溜まるもんは溜まるんだよな〜」
錨のロープを手繰り寄せながらつい本音が出てしまったシャチは、はっと我を省みる。
言いたい事に気づいたエリナは優しく笑みを乗せ労いの言葉をかけた。
「だよねー、まぁここはパーっと発散してよシャチくん?」
ウインクを決めニコッと笑顔を向けるエリナ。
心を読み透かされたシャチは苦笑い。
「悪りぃな…まぁこうも女子がそばにいると余計ね…まぁエリナはキャプテンのだから俺まだ死にたくないし?」
意味深く笑ったシャチに対してエリナは固まる。
「? どうしたエリナ」
その様子を不思議に思い声をかけるも、シャチは二の腕をガシッと掴まれ驚いた。
「ねぇ何それシャチ⁉死んでもそんな事言っちゃだめよッ!」
「へ?エリナってキャプテンの女じゃ」
「やめろーーーー!!!!!断じて断る!!」
シャチの体をぶんぶんと揺さぶりながら、鬼の形相で襲いかかるエリナ。
「ちっ、違うのか?」
「当たり前でしょ!ただの幼馴染よ!!」
「お、おう…わかった、悪りぃな…」
その激しい振動に若干酔いながら謝るシャチ。
エリナの決死さに、これは禁句なのだと心に刻む出来事であった。
島に着いたハートの海賊団は上陸準備を終え、各々班に分かれ用事を済ませる。
ここでの滞在は資材の調達のみで数時間だった。
今頃シャチは肩を落としているだろう。
そんな事を思いながらエリナは言いつけられた食材の調達にジャンバールと二手に分かれて精を尽くしていた。
店数は少なくこじんまりとしているが、なかなかストイックな品揃えで料理好き魂が唸る。
ある程度必要な物を買い終えた時だった。
「なぁ姉ちゃん、俺らと遊ばねぇ?」