第19章 ここまで頼んでないっ!
「ほまっ…やへろ!(お前、やめろ!)」
「ふっふっふっ」
冷酷で横柄、自分勝手で変態なこの男が、私の目の前でこんな顔を晒している。
元の顔は関係ないらしい。
中々のブサイクな表情の出来にエリナは満足そうに微笑んだ。
「ごめんなさいは?」
「何がだ」
「下着の件よ!私へのセクハラ行為と侮辱した罪を謝りなさい」
「はあ⁉…いひぇッ…わ、わかっひゃから…」
さぁさっさと謝れと、とりあえずエリナはつねていた頬を解放してやる。
「チッ痛ぇ…だから言っただろ⁉服や下着は全てあの店のオカマが選んだんだ。俺は一切関与してねぇ」
真っ赤になった頬に触れながら、不服そうなロー。
「ふーん」
仁王立ちでその後の彼の様子を観察。
「いつお前に何の侮辱した?大概そうだから区別してられねぇな」
はい失ー格!
やっぱりダメだこの男は。
「もう良いわ、その顔早く何とかしたほうが良いわよ」
今度こそエリナはみんなの元へ戻るのだった。
謝罪の言葉こそ聞けなかったが、奴が素直に謝る質とはハナから思ってもいなかったのでまぁそこは読み通り。
ただ大昔に魚に刺された事を気に留めていたのは意外だった。
私本人でさえ忘れていたのに…。
結構前の出来事をわざわざ気にかけていたローに胸が少しざわつく。
全く憎めない男。
エリナは小さく笑みを零して、笑い声と灯りの漏れる甲板へ足を進めた。
「エリナ〜主役なのにどこ行ってたんだよ?」
「見て見て!ベポの腹踊り超ウケるから!」