第17章 守るも何も子守だな。
「分かったか」
黙っていたローが口を開く。
「エリナ、俺と来い」
「!…、ロー…」
その台詞は憎い程彼に似合っていた。
圧倒的な自信と凛々しさに満ち溢れていて、私はつい顔が赤くなった。
「俺もお前も目指すものは同じだ。俺は取るべき椅子は必ず奪う、最速ルートなら俺と来る事だな。それにジョーカーを引きずり降ろす過程で科学者の実験台になってる餓鬼ども達を助けたいお前の情念は多いに役立つ…利害の一致だ」
「自意識過剰だし、一言多いわ!利害の一致って…」
一瞬でも頬を染めた自分を恨もう。
「海賊になるつもりなかったけど…、いいわよ、のった」
「マジで⁉⁉」
「やったあぁ!!!」
エリナの一言に飛び跳ねて歓喜するクルー達。
まぁ降参というか観念したというか…
みんなの熱意に負けました。
「でもみんな…世界政府特別指名手配である赤札の私を乗せると言うことは…みんなにも政府の刃は向くし、巻き込む事になるわ…」
一番引っかかるのはそこだ。
絶滅されたといわれている魔女の一族の最後の末裔である私。
政府はこの体に流れる生きた血とこの左手に飾られている指輪を喉から手が出る程追い求めている。
今、この瞬間も。
「俺たちに任せろやい!このハートの海賊団が全力でエリナを守るぜ!いや…守られちゃうかな」
「いや!俺たちで守ろうよ!ねぇキャプテン⁉そうっすよね⁉」
「…ふっ、守るも何も子守だな」
「子守⁉はぁ⁉⁉」
まぁ予想していた台詞です。
ローのあの口から俺が守るなんてロマンチックな台詞が出てくる筈もない。
ほんっと憎たらしいんだから!
「何はともあれ、みんなとの旅は楽しかったし、こんな船長じゃあ本当に同情するから私が均整役を務めなきゃね?お世話になります」
ペコンと頭を下げて笑顔を向けるエリナ。
青筋を立てる一人の男を残しクルー達はエリナ目掛けて飛びつき熱く抱擁を交わす。
ベポを除くその他は多少の下心を隠しつつ。
「ちょっとみんな、苦しいって…」
どさくさに紛れて乳触った奴誰だぁ!
「あれ…?そういえばなんかこの家具たち見覚えある…」
ローの能力によって酒瓶と入れ替わり降り立ったこの部屋。
抱きつくみんなの隙間から見えたカーテンとかソファやら、よく見れば何だか見覚えがあり首を傾げる。