第16章 俺はパン嫌いだ。
「またね〜」
ご満悦な笑顔で手を降るオカマの店を後にし、市場に戻ったローはエリナを探すがすぐ見つかった。
両手に抱えた一際たくさんの荷物が目立つ。
どうやらエリナは目の前に並ぶ食材に目を輝かせながら食い入っていて、背後に近寄っても全然こちらの存在に気付いていないようだった。
面白れぇ…
そんなに楽しいか。
くくく、と喉の奥で笑みが零れる。
いつになったら気付くのかもう少しそうしていたかったが、重そうな荷物に見兼ねてそれへ手を伸ばした。
「うわっちょっとびっくりさせないでよ!」
突然軽くなった左手に驚き、やっとこちらに気付く。
「持つ、貸せ」
「ひったくりだと思ったじゃん」
「失礼だな、ていうかずっと前から後ろにいたんだが」
「うっそ⁉」
「楽しくて良かったな」
不覚…!
いつから見ていたのか考えるとエリナは恥じらいと悔しさが滲み赤面する。
へ、変な顔とか癖出てなかったかな…⁉
「もういいか?」
「ちょっと待って!もう一軒だけ」
荷物持ちの登場で身軽になったエリナは最後に気になっていたお店をもう一度周り、目をつけていた万能調味料を買ってから、ローと別れた。
「ちょっと買い過ぎたかな…」
結構重たいはずなのに軽々と買い物袋を肩に担いで去って行くローを見送りながらエリナはその量に若干申し訳なさを感じたが、ジャンバールなら上手にやってくれる。そう信じ気分良くとっていた宿へ帰った。
部屋のベッドに倒れこみ天井を仰ぐ。
そういえば自分の旅の準備何もしてないじゃん!
ログが溜まるのは明日なのに…
ログポースを見つめ小さく溜息をつく。
まぁ人の為に動いた二日間だからいっか。
今日はもう日も暮れちゃったし…
そういえば明朝、出港するって言ってたな。
見送りにでも行くか…
そんな事を考えていたらいつの間にか眠ってしまっていた。