第16章 俺はパン嫌いだ。
「はは…なるほどね」
と同時に自身に向けられるジェラシーに背中が丸まる。
ひ〜怖い!
まぁ…イケメンだもんなぁロー。
思ったより見つめていたのか、私に気づいたローがちら、と目線をよこす。
「なんだ」
「いや…」
ちょっと、いやかなり、おっかない所がなければな〜
まぁこの危険漂う妖艶なオーラが女を惹きつけるのか…
料理が来るまでの間、エリナは冷静にローを分析していた。
「ねぇローってこんな風に女の子とご飯食べた事あんの?」
「あるわけねぇだろ。面倒臭ぇ」
「じゃあ私が初めてなのね〜よしよし♪ ね、デザートも食べていい?」
目をキラキラさせながら問うエリナに対しローは特に無関心なようで。
「勝手にしろ」
「ふふ」
決して断らない、実はこちらに決定権をくれているローの優しさにエリナはつい笑ってしまう。
「ローも食べるでしょ?甘いもの嫌いじゃないでしょ」
暫く間を持たせてから、相変わらず窓の外を見たままローは答えた。
「ああ…そうだな。スポンジは嫌いだ」
「はいはい」
ローの奢りでランチとデザートをご馳走になった後、多くの人が行き交う活気溢れる市場に訪れた二人。
「ちょっと今お腹一杯で食べ物見たくないんだけど…」
「うるせぇ、いいから選べ。俺は別の店に用事があるから少し離れる」
スタスタと違う方向に歩いて行くローを見送ってエリナはとりあえず市場を物色する事にした。
長期の船旅には長く持つものがいいわよね。
干物やチーズ、熟成した物に…
あとローはミソスープが好きだったからミソなんかも買っといてやろう。作り方はジャンバールなら分かってるはずだわ。
うわっ何これ⁉キノコ⁉
おもしろ〜い!
お腹は一杯だが、彩り豊かな野菜に魚、珍しい食材やスパイスなどを目の前にすると料理好きなエリナはわくわくして腕がなる。
気付くと荷物は両手で持つ程に膨らんでいた。