第16章 俺はパン嫌いだ。
「次って?もう終わったじゃん」
「お前の料理の腕は認めてやる。これからの航海で必要な食材を選んでくれ」
「…お腹空いたな〜。あー、お腹空いて動けな〜い」
進む足を止め駄々をこね出すエリナ。
ローはくるりと首だけ振り返りこれでもかと睨みつけるが、エリナは近くにあった飲食店のガラス越しのサンプルメニューを見て、
「あー、このナポリタン美味しそ〜」
完全に策略犯だ。
ローは盛大にため息をついてから、エリナの元へ引き返した。
「ったく…しょうがねぇな」
メニューをザッと見てローは店の暖簾をくぐった。
いえーい♪
ガッツポーズを決めローの後に続いた。
案内された奥のテーブルに二人はつく。
ローは頬杖をついてぼーっと窓の外を見ていた。
「あ、このサンドウィッチ美味しいそ〜。特製バジルソースだって!」
「俺はパン嫌いだ」
「へ〜美味しいのに、人生損してるね」
ある程度メニューに目を通し、やっぱりインスピレーションで気になっていたナポリタンをオーダーする事に決めた。
「私決まったけど、ローは?」
「俺はいらねぇ、珈琲」
「あっそう、なんか悪いね。すいませーん!」
若くて可愛らしい女子店員達は何やらこちらを見てヒソヒソ話していた。
エリナが注文すると僅かな悲鳴にも似た黄色い歓声が耳に届く。
やってきたウェイターはテーブルに来るやローに目を奪われていた。
「…でお願いします」
「あっ⁉申し訳ございません!もう一度お願い致しますっ」
「へ?あ…えーと」
そこでエリナは気付く。
店の店員含め、女性客の熱視線が目の前の男に注がれている事に。