第16章 俺はパン嫌いだ。
「俺と一日付き合え」
そんな彼のご命令から、二日酔いで若干頭痛もする気怠い体に鞭を打って、かくして私はローと街を散策しているのでありました。
「てゆーかそんな約束したっけ?」
ローが言うには昨晩の飲み比べで負けた方は勝者の言う事を何でも聞くと言う、全く身に覚えの無い約束。
若干腑に落ちないながらもこうしてわざわざローがやってきたのだから、確かに約束した事で私は負けたのだろう。
「私が負けるなんて…これまで私に勝った奴なんていないのに」
「いや、お前と同じものを飲んでいたら…どうだったかな」
「え?ローもこの国名産のラム飲んでたんじゃないの?」
「いや、ラベルが違うものだ。店主に聞いたらあれを気に入ったお前に飲み比べが始まっても同じものを出していたらしい」
なるほど…
これで敗退の合致がついた。
「俺もあの酒を同じペースで飲んでいたら…互角か、もしかしたらお前の方が強いかもな」
「えっ、じゃあちゃんと勝負出来てないじゃない!」
「うるせぇ、海賊が二言を吐くのか?」
「う…てか海賊じゃないし」
兎にも角にも、負けた私は勝者の言う事を実行しなくてはならなくて。
「まぁローが言う通り私はセンスも良いし見る目はあるけど、本当に私なんかでいいのかしら?」
「お前だから頼んだんだ、いいから選べ」
何でも言う事を聞かなければならない私の使命は何やらハートの海賊団に新しい部屋が必要なようで、その家具を選んでほしいとの事。
私自分の船の手配とか準備でそれどころじゃないんだけどな。
そう思う反面、コキ使われると予想していたのに意外にも頼み事をしてきたのが珍しくてついついOKを出してしまったけど。