第15章 却下だ、理由がねぇ
「キャプテン…大丈夫かな?」
「ほっとけ」
机にとっ伏すエリナの背中をベポが優しく撫でている。
勝負から一時間。
ちっとも顔色も目の色も変えないローに対しエリナは完全にダウンしてしまった。
「ったく…上で寝かせてもらえ」
「そうだね」
ベポはお酒を極力回らせないように大事にエリナを抱え店主に断りを入れてから二階の空き部屋へ運んだ。
「あれ〜?エリナは?」
違う席で腹踊りでもしていたのかペンギンとシャチが落書きされたお腹を披露しながらこちらのテーブルへ来た。
「今ベポが運んでる」
上に向かい指さすローの様子にペンギンとシャチはちょっぴり肩を落とした。
「そうすか〜…ま、キャプテンには勝てないっすよね!」
「あっ、勿体無いから俺エリナの酒飲んじゃお〜♪…ぶへっ、…なんだこれ⁉」
悪ノリしたシャチが手に取ったエリナのジョッキ。
口に入れた瞬間シャチは苦い顔色を浮かべる。
「なんだ」
「これ超強い酒っすよ〜⁉こんなのずっと飲んでんすかエリナ⁉」
シャチからジョッキを奪いローも一口飲む。
すると、自分が飲んでいたラムなんかより香りもアルコール度数もかなり強烈な酒だった。
喉を通す度焼け付くような感覚だ。
店主によると、エリナはこの酒を気に入ったようで飲み比べが始まった後も同じ酒を出していたらしい。
なるほど…
ローは納得した。
このレベルの酒を自分と全く同じペースで空けていたら流石に酒飲みでも一時間でああなるな。
少し腑に落ちないが確かにエリナが酒に強いと認めるには充分だった。