第15章 却下だ、理由がねぇ
その晩、ハートの海賊団は息子の命の恩人と国を救ってくれたという事でオズの母親の経営する酒場でご厚意により酒が尽きるまで飲み明かしていた。
「良かったねオズ、助かって」
エリナの前ではにかむ少年。
ローの迅速な処置により、少年の肩の傷は見る見る回復した。
「うん!ありがとうお姉ちゃん、お兄ちゃん」
少年の屈託のない笑顔にローもふっと笑みを零したように見え、この人もこんな風に笑えるようになったのね、とエリナは内心驚く。
「安静にするんだよオズくん?」
白熊が立って喋る事にすっかり慣れた少年は頭を撫でるフワフワした手を気持ち良さそうに受け入れる。
「オズ、もう少し休んでなさい」
「はーい」
もう少しみんなと話していたかったのにと、母親の言いつけにちょっと不貞腐れながらも少年はまた皆に礼を告げてから奥の部屋へ戻った。
「本当になんて感謝したらいいのか…」
カウンター越しに眉根を寄せこちらを見つめる店主。
「気にしないで」
「操られていたなんて…本当にありがとう」
瞳を潤ませる店主にエリナは照れ臭そうに髪をいじる。
「その分、今夜は美味しいお酒をたらふく戴くから♪」
空いたグラスを見せウインクするエリナ。
「…ええ!尽きるまで飲んでちょうだい、何なら二階の部屋が空いてるから泊まって行ってもいいわよ」
ハートの海賊団は店のご厚意に甘え、それは豪快に酒を浴びていた。
「しっかしエリナの魔術はすごかったな〜」
「ほんとほんと!俺びびっちゃって暫く動けなかったんだぜ?」
エリナを囲うクルー達は興奮気味に昼のマジックショーの感想で持ちきりだった。
「あまりあの魔術は使いたくないんだけど…流石に私もあの時は、ね?」
撃たれたオズを思い起こし胸が詰まる。
助かって本当に良かったと、ただ思う。