第14章 面白れぇもん…見せてもらおうじゃねぇか
彼女を纏う唯ならぬ雰囲気にペンギンは息を飲む。
ゴゴゴゴゴーー
地響きと共にエリナの周りに突如風が起きる。
長い黒髪がその風に揺れていた。
手袋が外され晒された左手の指輪が、妖しく眩い光を放っている。
「エリナ、大丈夫⁉」
遠くから見ていたベポがエリナの変化に慌てふためく。
「待て、黙って見てろ」
それを制止するロー。
口元は怪しく笑みを浮かべていた。
「面白れぇもん…見てせもらおうじゃねぇか」
「なんだ、この地響き…」
「地震か⁉あ…あの女やべぇ!」
突然の辺りに巻き起こる疾風と激しい地鳴りに男達は警戒する。
「あんたら…よくも子供を…!」
「うわァ⁉なんだあれ⁉」
エリナの足元から激しい衝撃音をたてコンクリートの地面を盛り上げた何か。
それは物凄いスピードでアスファルトを突き破りながら男達へ一直線に向かって来る。
姿が見えない分、固いアスファルトを這いながら迫ってくるそれはおぞましく、息を飲む。
そして男達の前でその正体を表した。
「な、なんだこれッ⁉植物⁉」
「ひぇ…ッ⁉…気持ち悪ぃ!」
姿を現した棘を纏う太い植物の蔦。
それはいくつも蠢いて、先には鋭い牙を備えた化け物のような顔があり、淫らに鋭利な歯を零しながら涎を垂らし男達を見つめている。
キシャアァァァーー
気味の悪い奇声と共に。
「ひっ…⁉」
「ばっ…化け物だあぁ…!!」
その蔦は素早く男達の足元から絡みつき、あっという間に身動きを奪う。
そして全身を締め付けられ段々と青ざめていく男達。
最後には蔦の牙が泡を吹く男達の顔へ目掛け容赦無く噛み付いた。
「ギャアアァァァ!!!!!!」
耳を劈く悲痛な男達の叫び声にベポやシャチは耳を塞ぎ目を瞑る。
あまりにも酷で残虐な光景だった。
男達の息の根が絶った事を確認したエリナはふっと術を解き、その無数の植物達は一斉に姿を消した。
何事もなかったかのように風が止み、静寂だけが辺りを包む。
皆、目の前の現実に息を呑み動けないでいた。