第12章 なんで俺の方が変装濃いんだ。
「よし、良い?打ち合わせ通り行くわよ」
「ああ、とっとと済ませるぞ」
二人は鉄格子の門の前まで足並みを揃え向かう。
少しコホンと咳払いをしたエリナ。
「あの…子を腹んでいまして…今すぐ神様に生贄としてこの子を捧げたいんです!ねぇ貴方?」
大根役者もいいとこだ。
「あ、ああ、そうだなお前」
「今すぐ国王様に会わせて下さいまし」
用意していた目薬をいつの間に活用したのか涙目で訴えるエリナを横目にローはある意味感心さえ抱く。
「ああ、気持ちは分かった。しかしまだこの世に誕生していなければ、生贄として神は喜びません。その代わりに金一封を捧げてもらいます」
落胆する素振りを見せてから、これまた用意していた札束を取り出す。
「あ、あの…これで充分でしょうか?」
「きっと神も喜ばれます。さぁどうぞ」
ちらつく札束を目の前に、門番は扉を開けた。
楽勝♪
エリナとローはアイコンタクトを交わす。
社の中へ入ると、豪華な吹き抜けのエントランスがお目見えする。
細かな部分まで綺麗な装飾がされた階段や照明、絨毯。
絵画や骨董品が揃えられ、憎たらしい程金持ちを象徴したような場所だった。
何が聖域よ…。
肖像画が並んだ長い廊下を案内される。
突き当たりの扉まで来て、エリナ達は察した。
この先か。
使用人が重たそうな扉を開けると、先で椅子に腰掛ける男を確認出来る。
「国王様、こちらのご夫婦が神様にご奉納をしたいと」
「ああ、そうか、通しなさい」
貼り付けたような笑みを浮かべる国王。
許可が降りた二人はゆっくりと足を進め入室すると扉が閉まり使用人は去った。
静かに歩みを進める。
質の良さそうな革張りの椅子に身を預けこちらに微笑みかけるタヌキ男。
「神様に自らご奉納を望むなんて、民の鏡だ。なんて素晴らしいのでしょう…聞こえます…神も喜んでおられる」
「そうですか」
感嘆する国王に内心吐き気を覚えた。
「では、ご奉仕の物を」
「はい」
エリナが金を差し出す素振りをして、向けたのは銃口だった。