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医者と魔女

第10章 そんなの効きません。




「ちょっと会わせなさいよ!どうせ中に居るんでしょ⁉」
「お前⁉やめろ!」
「ちっくしょー!この門やけに頑丈なのよ!」

ガシャガシャと鉄格子の門を揺さぶり、発狂する。

「なんなら国王の秘密バラしてやるー!」
「何だ⁉黙れお前!」
「騒ぎがすると思えば…一体何だと言うのだ」
「ラザール国王⁉」

作戦は成功した。
おそらく窓から訪問者を確認していた国王は騒ぎを起こす上に、きっと先程叫んだ事も聞こえていたのだろう。
簡単に出てきてくれた国王に呆れる。

どれだけ知られたくない秘密があるのやら…。
全くちょろいもんだ。

「下がれ」
「はっ」

門番を退かせ、エリナを見やる国王。

「リゼ…と申したな」

エリナは驚いた。
目の前の国王の顔はあの鏡に映った狸男と一致していた。
生で見るとますます狸同然だった。

「単刀直入に聞くわ。あんた、あの鏡使って何やってんの?」
「…ッ⁉」
「光ったあんたの目、あれから皆おかしいのよ」

一瞬動揺したラザール。
しかし貼り付けたような笑みを乗せ答える。

「何を言っているのだ?私は神の声が聞こえるのだ。私に従えばこの国は滅ばずに済むのだよ?」

次の瞬間、国王の瞳はあの鏡で見たような黄金色に変わる。
エリナはその瞳の放つ光を真正面から受けた。
心臓を貫くような衝撃の後硬直する全身。
癖になりそうな脳を麻痺する不思議な感覚。
しかし覇気で冷静にかわした。

「これか…」
「何⁉」
「あんたはその瞳で何を企んでいる!」
「ひっ…⁉」

国王の誤算。
エリナはその瞳の光を浴びても微動だにしなかった。
途端に怖気付いて焦った国王は門番に殺せ!ひっ捕らえよ!と命令する。

向けられた鋭利な刃。
エリナは素早くかわし隙をついて森の中へ急いで逃げる。

「待てー!」

追いかけてくる傭兵を横目に、森の奥深くへと逃げ込む。


暫し森の中を全速力で駆け巡れば上手い事逃げ切れたのか、後ろを確認すると追ってくる傭兵の姿はなかった。
逃げ足だけは小さい頃から速かったのだ。

エリナはガッツポーズを決める。


「よし、…掴んだわよ」



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