第10章 そんなの効きません。
「その時前王は病死して、後継者が決まっていなかったのよ。その時突然ラザール様はいらっしゃって、お告げをくれた」
「…このままでは国は滅ぶと?」
「ええ。ラザール様はこの国を救ってくれたのよ。神の遣いとして」
エリナはどうもスッキリしなかった。
別に神や宗教に口出しするつもりはない。
ただ気になったのはあの鏡とそれを見てから黄金色に色を変えた店主の瞳。
今もその瞳はガラス細工のように人工的で生気が感じられない。
「国王って、どこにいるの?」
「国王様なら森の奥深くの社にいるわ。ただあそこは神に最も近い場所、聖域だから市民だろうが安易に近づくのは避けているのよ」
「ふーん…ごちそうさま!」
エリナはご丁寧に場所まで細かく教えてくれた店主に感謝する。
店を出ると確かに遠く山を背に深く生い茂る森と、その中心にある塔を確認出来た。
ふーん、あそこね。
森を歩き一時間。
途中迷ってしまいかなり時間をかけてやっとここまで辿り着いた。
まぁ実際は途中に生える珍しい熱帯植物に余所見し迷い込んだ所もあるのだが。
しかし流石熱帯地域。
湿度が高く蒸し暑くて、ベタッとした気持ちの悪い汗が肌にまとわりつく。
見上げると高くそびえる社と呼ばれる塔。
植物の蔦が絡まり緑色でまるでお化け屋敷みたいだった。
「あっちぃ…、お、あれかな門は」
これまた植物が絡まる高い鉄格子の門へ寄ると門番らしき二人が現れた。
「一般市民か?何用で?」
鋭い視線で警戒する門番。
「国王様に会いたいの。用事があって」
「名を申せよ」
「…リゼよ。あの時のお礼を伝えたくて」
「…暫し待てよ」
暫くすると、一人の門番が戻ってきた。
「言伝なら私が受け取る。国王は席が外せない」
「はぁ⁉」
ここまでやってきたと言うのに。
やはりそう簡単には国王に会えないのか。
エリナは考えた。