第10章 そんなの効きません。
店の外へ出ると、例の男二人組は何人もの子供を引き連れまるで大名行列だった。
子供は皆どこか暗く無表情である。
大勢集まった子供らがワゴン車に順番に乗せられていく光景をエリナは険しい顔つきで遠くから眺めていた。
暫くしてキツネ男と熊男も乗り込み、車は煙を上げ発進した。
親と引き離されて、不安に陥る子供。
あんなに泣いてすがっていたのに最終的には子供を生贄として捧げ歓喜する母親。
おかしい。何なんだこの国は?
神?奉仕?
考えれば考える程解らなくなり、気になった事には徹底的に解決もしくは納得しないと気が済まないタチを自分でも呪いたい。
エリナの足は先程の酒場に向いていた。
店に入ると、カウンターで静かに作業をしている店主。
エリナに気付くと、手を止め申し訳なさそうに小さく微笑んだ。
「さっきはごめんなさい、お詫びに珈琲でも淹れるわ」
「ああ…ありがとう」
子供が連れさられていった後と言うのに、至極平常に見える。
私だったら信じられない。
差し出された珈琲を一口飲み、心を落ち着ける。
エリナはゆっくりと口を開いた。
「さっきのあれは、何?」
店主は一瞬目を開くも、酔いしれた様に微笑んだ。
「私は神様へ最上級のご奉仕が出来たの。貴方旅人さんね?この国には数年前今の国王ラザール様がやってきて、この島を滅ぶ運命から救ってくれたのよ」
「滅ぶ?」
「そう。ラザール様は神の遣いだから神様の声が聞こえるの。滅ばない為には子供を生贄として神様に捧げなければいけないのよ」
「………」
なるほど…で、子供がいなければ金なのか。
「それは不定期に行われるの?」
「そうね、神様の決める事だから…鐘楼の音がお記しだわ」
「その国王ラザールが来て前王はどうしたの?」
エリナは最も気になった事を聞いた。