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医者と魔女

第8章 ああ悪いベポかと思った。





「やっぱり気にしてんじゃん!」
「俺は何事も形から入るんだ」

白衣姿で颯爽と入ってきて、おまけにポケットから黒縁眼鏡を取り出してきた時はどうしたもんかと思った。

ていうか、一通り揃えてるんかい。

「ったく、こんな腫らして」

服を二の腕当たりまで捲り上げられ、晒されたそこに現れる痛々しい湿疹。

「…………」

眼鏡をかけたまま険しい顔付きで無言で薬を塗って行くロー。
エリナはここまで悪化させて結局手間をかけさせてしまっている事に申し訳なくて少し落ち込んだ。

「ごめん……」

ちら、とローはエリナを見やる。
彼女は珍しく暗い表情だった。

「別に…あまり無茶するな。お前は昔から無茶したり我慢したりする所がある」
「う…ごもっともです」
「そういえば手袋してないのな」

そう言われて気付く。
そういえばこの船に乗ってからあれだけ毎日必須にしていた左手の手袋を全く着けていなかった。

「うん…まぁこの船でなら別にいらないかなって。ほら料理する時も邪魔だし?」
「そうか」

それからまた黙り込むロー。
なんで聞いたんだろ。

「ほら、後ろ向け」
「へ?」
「その様子じゃ全身だろ。万が一掻きむしって化膿したら厄介だ」

二論は言わせない表情で向かって来られたら従う他、無い。

「うん」

素直に後ろを向き、羽織り物を脱ぎ髪をかき分ける。
晒したうなじと肩に薬を塗られる。

「ジッパー下ろすぞ」
「えっ!」
「自分じゃ塗れねぇだろ」
「う、うんまぁそうだけど…」

背中をさらけ出すのは抵抗あったがここまで放っておいた自分が悪い。
背中のジッパーを下ろされ、チューブトップになっている服だからずり落ちないように必死で前を押さえる。

「…っ」

冷たい指の感触につい肩を強張らせ反応してしまう。

「くすぐったいよ」

横腹を滑る指先にいちいち反応してしまう自分が恥ずかしい。

でもローは黙って薬を塗り続ける。
やけに優しい手つきで、ゆっくりで、もどかしい。
その手が腰まで下りてきた。

びくびくっと肩が震える。

もう駄目っ限界!

そう思った時、

ぷに。

ーーーーえ?



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