第8章 ああ悪いベポかと思った。
その後も今日は特にこれと言って大きな成果もなくおやつ程度の小魚しか釣れなかった。
波も荒れて嵐が近いと読んだペンギンはローと相談し潜水を開始する。
間も無く海は荒れ雷鳴が轟き巨大な渦が船を取り巻く。
「おい、急げ!」
「面舵いっぱい!」
「アイアイ!キャプテン!」
「エリナも一緒に引いて!」
「OK!」
賭けと時間との勝負。
無事に渦に飲まれる事なく船は潜水出来た。
一仕事終えたエリナは部屋に戻りソファに身を放り投げていた。
「ふ〜、潜水艦って便利ね」
ローはさっきから何やら薬を調合している。
医務室で行わないのか…
「ねぇなんでここでやってんの?」
側に寄りすり鉢の中を覗き込む。
薬草の特有の匂いが鼻をつく。
「気が向いた時すぐに取りかかれるようにだ」
「あんたって本当移動範囲狭いのね」
彼の引きこもり具合にはほとほと呆れる。
「…ローって医者に見えないよね」
何気なく言ったつもりだったが、彼には聞き捨てならないワードだったらしい。
こちらをわざわざ睨み付けた。
が、咄嗟に腕を引かれる。
「なっ、何よ」
「どうした、この湿疹」
「………」
隠していたつもりなのに、やはり欺けないか。
目を見開き私を鋭く睨んでいる。
実は嵐の前釣り上げたアンコウに刺された後、だんだんと全身が痒くなってきて終いには赤く腫れ上がってしまった。
しかし嵐の中の潜水でそれどころではなかったし暫くすれば治まると思っていたが、益々悪化していく一方だった。
「首もじゃねぇか…こりゃ全身だろ」
「う…」
「吐き気は?」
「ない」
「熱は…ないか」
とてもナチュラルに額に手が触れ驚く間もなかった。
「毒もってたら危なかったぞ。早く言え馬鹿。こっちこい」
「………」
少し苛立っているローの後ろを追いかけ部屋から繋がる医務室へ向かう。
「そこに座ってろ」
「うん」
指示された丸椅子に腰掛けると何故か部屋に戻ったロー。
しばらくして出てきたその姿に思わず噴き出した。