第8章 ああ悪いベポかと思った。
朝食の準備をしていると各々が食堂に顔を出してくる。
「ふわぁ〜…あれ?エリナ?」
一番に食堂にやって来たシャチはあくびをしながら朝食を持ってくる意外な人物の登場にあれ?と首を傾げる。
いつもとは少しテイストは違うが定番メニューを押さえつつオリジナルも織り交ぜられている、見たことないようなメニュー。
「えっ⁉もしかしてエリナが作ってくれたの?」
嬉しそうなシャチにエリナは満面の笑みで答えた。
「私もタダで船に乗っちゃ悪いしね。今日から食事を手伝う事にしたの」
ローからの命令だったが、それを伝えるのは避けた。
「はぁ、なんて幸せな朝なんだろう」
至極幸せそうに箸を取り、シャチはいただきます、と手を合わせた。
ベポとペンギンもやってきては皆エリナが作ったサプライズと、しばらく食事を切り盛りしてくれる事に朝からハイテンションな様子だった。
「え⁉キャプテン!」
ベポの声を合図に皆がその方向を見る。
すると寝癖のついた頭をいじりながらローがスタスタと一番奥の席まで行きドカッと腰掛けた。
その一連を箸を持つ手も止まらせ、皆固唾を飲んで見ていた。
エリナは一瞬ローと目が合った。
「キャプテンがみんなと同じ時間に食堂来て飯食うなんて…」
「どうしたんすか⁉」
信じられないとでも言いたげなペンギンとシャチ。
「別に…悪いか?」
ギロッと睨まれば口を閉ざさるを得ない。
この人は24時間威圧感たっぷりだ。
「ふふふ」
エリナは小さく笑ってもう一人前の用意へ取りかかった。
今ハートの海賊団では奇跡が起きているらしい。