第8章 ああ悪いベポかと思った。
なぜでしょう。
私は異様な暑さに寝苦しく目が覚めたと思えば、同じ布団で誰かと一緒に寝ていたようです。
その誰かと言えば。
「………っ⁉」
目の前に迫る、ローの顔。
それは寝息に触れるくらい近い距離。
キリッと整えられた眉に高く筋の通った鼻。
隈の深い瞳は切れ長で悔しいくらい睫毛は長かった。
もっと愛想が良ければモテるはずなのに…
って何冷静に分析してるんだああ!
何故一緒に寝ている?
昨夜私はいつも通りソファで就寝したはずだ。
寝相の悪さか?
ソファから転がり落ちローのベッドまで移動し更にそこに這い上がったのか?
流石にそれは無いな。
あったら自分でも引く…
おまけに腰の辺りに重みを感じると思えばローの手が乗っていて私は抱き締められていると言う体制にある。
頭をフル回転すればこの状況に恥ずかしくなってきて、エリナはその重い腕から必死で抜け出した。
はぁーすっごい寝汗。
「ん…」
寝返りを打ち僅かに片目を開くロー。
「…そこで何やってる」
「何やってる、じゃないでしょーよ!」
早口で言いまくれば今度は両目を開けこちらをぼーっと見ている。
「なんで私があんたと一緒に寝てんのよ!」
赤面して言い放っても寝ぼけてるのか特に反応はなく他人事かの様に頭をポリポリ掻いている。
「ああ…多分寝ぼけて間違えた、毛布取ったつもりだったが…」
「間違えた⁉」
エリナは言っている意味が分からなくてますます混乱する。
「ったく…久しぶりに熟睡してたのに…」
そうぼやいて背中を向けまた眠りに落ちようとするロー。
意味わかんないっ!
朝食の準備があるのでエリナは部屋を後にしたが今日は朝から最悪なスタートだった。