第6章 ふっふっふっふっ
釣りを初めて早一刻。
いつまで経っても魚数匹しか泳いでいないエリナのバケツを覗きペンギンは鼻高々なご様子。
「エリナ釣り下手だな。ほら俺様のを見ろ!」
確かにペンギンのバケツには小振りなものからそこそこ大きいものまで数十匹飛び跳ねているが、エリナはそんなペンギンに不敵な笑みを向ける。
「ふっふっふっ…ペンギンくん。食物連鎖というものを知っているかい?」
「………まさかッ…!」
そう。エリナは釣れた魚を餌にし、またそれを求める魚を餌と繰り返し大きいものがかかるのをジッと耐え忍んでいたのだ。
釣りは忍耐力と辛抱。
どれだけ、ぶるぶるっと魚がかかる感触を見送った事か…!
「おいエリナ、竿スゲぇしなってないか?」
「…ふっふっふっ」
「だからその笑み怖いって!」
「今よッ!」
勢い良く立ち上がり船内に飛び移ったエリナは縁に片足をかけ、思い切り竿を引く。
竿は物凄い弧を描き、今にも折れてしまいそうだ。
「ちょっとペンギンっ!手伝ってよ!」
「あ⁉ああ…!」
ペンギンも竿に手を伸ばし二人掛けで懸命に竿を引く。
引いては引かれ
引かれは引かれ
持久戦となった末、獲物の影は見えてきた。
「おっ、きたか⁉」
「今よっ、せーーーの!!!!」
ーーーザッパァァァーーーーン
「「えええええーーーー⁉⁉⁉⁉」」
凄まじい水飛沫の中、宙へ飛んだのは数メートルはあるだろう巨大なイカだった。
こちらを目掛けて突っ込んでくる所を二人は慌てて避ける。
そしてけたたましい音をたてながら甲板へと打ち上げられた巨大イカ。