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医者と魔女

第40章 魔女がいたことを忘れない。




「そうだよねエリナ、ごめん」

申し訳なさそうに謝るベポへエリナはにっこり笑った。

「後でたっぷり聞かせてね?ベポ」

「じゃあエリナ、部屋はベポがたまに換気や掃除してくれてたから大丈夫だとは思うけど…」

「あ、そうなんだありがとう。あっちょっと待ってみんな!あの…」

「ん」

「なんだ」

呼び止めたエリナへ皆の視線は留まる。

エリナは一呼吸置いて告げた。

「私、普通の女の子になってもいいかな」

「え?それって…」

「普通って…」

どよめくクルー達。

「だから!私魔女やめたい、いいと思う?」

「えっ⁉︎」


突然振られたシャチは困惑顔。
悪い冗談か、いやエリナの瞳は真剣そのものだった。


「う、うーん…でもエリナが一族の最後の人間なんだろ?血筋が途絶えちゃっても良いのか?」


シャチの問いにエリナは目を伏せた。


「ええ…私の子供には、同じ運命を辿ってほしくない」

「…………」

「子供が出来ても一生こんな運命なんて…可哀想」

「…そうか」

この二年エリナがどれだけ辛い思いをしたのか、その痛みは本人じゃなきゃわからない。

シャチを始め皆はエリナの言葉に黙りこんでしまった。

「それは途絶える事しか出来ねぇのか?」

暫く傍観していたローは静かに問いた。

「一時的に能力を抑え一族の存在を無くしたようには出来ないのか?」

「そうだよ!またいつか復活出来るならやめることないよ。封印するんだ!」

ベポとは裏腹にエリナは難しい表情を浮かべた。

「分からないわ。指輪と契約を解いた後、私以降の血筋が触れたらどうなるのか…復活する可能性は0ではないけど」

「それはやってみねぇと分からねぇだろ?いいさちょっと休憩だ、魔女休憩!」

「俺はエリナが好きな様にすれば良いと思う。エリナの決める事だしどちらに決めようがエリナはエリナだし大切な仲間だろ」

「みんな…」

「そうさ、魔女であっても今度こそお前さんを守るぞ」

「ジャン…」




エリナの目頭には光るものが。
そして困ったような、ホッとしたような、クシャクシャの笑顔で。



「やっぱりちょっと休憩したい。私普通の女の子になる」



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