第40章 魔女がいたことを忘れない。
ハートの海賊団は全速力で百倍馬力で、海中を切り進んでいた。
あれだけ巻いて出したから距離もずいぶん離す事が出来た。
とりあえず安全海域だ。
「もういいだろう」
「そうですねキャプテン…ハァ…俺この日をどれだけ待ち焦がれていたか」
「…ああ」
操縦を担っていたペンギンは自動運転へと切り替え、歓喜のため息をついた。
「本当にこの二年…もどかしくて…ただがむしゃらだった。どうすればエリナに近づけるのかって」
キャップを深く被り直したペンギンの表情は伺えない。
「わ〜エリナ!」
「エリナ!」
きっと食堂だ。
ベポ達とエリナの声が漏れて聞こえてくる。
明るくて幸せそうなその声。
「行こう、キャプテン」
「ああ…そうだな」
二人が食堂に来る頃にはシャチの号泣もひとまず落ち着いた所だった。
「ペンギン!あぁ…会いたかったわ」
彼の姿を見つけてはハグをしたエリナ。
後ろにローがいる事をペンギンは心配していたけど、今日くらい大目に見てもらえそう。
それからエリナは一つ呼吸をおいてから、ゆっくりと口を開いた。
「みんな…今までごめん、そして今日までありがとう」
深くお辞儀をする彼女の姿に皆の胸は詰まる。
「謝らなければならないのは俺達だ。二年間も待たせて…ごめん」
唇を噛み締めたペンギン。
「辛かったよなエリナ…すげぇ痩せたし」
シャチは小さくなったエリナの姿に切なそうに眉根を寄せ思いを馳せる。
「痩せたし体力落ちたし、私足手まといかも」
冗談目かして笑ったエリナ。
自分とは裏腹に皆、以前より勇ましく感じる。
強靭さが滲み出ていて勇敢な男のオーラを纏うクルー達にエリナは驚いて、誇らしく感じて、そして不安になる。
「そんな事ないよエリナ、また一緒にトレーニングしよ?」
ベポも男前度が上がっただろうか。
毛並みの艶が以前より良くなってるし、背も伸びた気がする。
「ありがとうベポ」
「それからねエリナ!話したい事がいっぱいあるんだよ。えっと…」
「ベポ。とりあえず今はエリナには休んでもらう。そして少しでも遠くへ行くぞ。まだ油断は出来ねぇ」
ローの一声に皆は納得する。
とりあえずエリナにはゆっくり休んでもらわないと。