第40章 魔女がいたことを忘れない。
エリナを抱いたままのローは辺りを用心しながら港付近の岩陰に潜り込んだ。
そっとエリナを下ろす。
「ここまで来れば大丈夫だろう」
ローは帽子を取り額に流れる汗を拭った。
長い浮遊移動にエリナは足に力が入らない。
「ダメだロー…私船に戻っても足手まといかも」
「今更気付いたのか?遅えよ」
「はぁ⁉︎…この野郎」
毒づくローだけど、私の心配は正直的中しているから本気で今後を心配する。
体力も落ちたし反射神経もすっかり鈍ってしまった。
銃だってこの二年触れなかったし、今トリガーを引いたら肩がやられてしまうかもしれない。
「心配すんな。ゆっくりでいい」
頭にぽんと手を置かれ、その感触とローの優しい声に涙が出そうになる。
涙腺まで脆くなってしまったのだろうか。
「…っと」
突然抱きついてきたエリナに一瞬驚いたローだったが、彼女の肩が小さく震えている事を知って強くエリナを抱き締めた。
もう逃がさないように。
二度とこの世界から君が居なくならないように。
「ロー…ありがと」
「いや……すまなかった」
顔を上げたエリナ。
目にはうっすら涙が光っていて。
それを親指で拭って頬を撫でる。
そのまま二人の顔はゆっくりと近付き、絡まる眼差し、息が止まる。
狂おしいくらい愛しい瞬間。
「ふ…んん…ろぉ…」
ついばむだけの軽いキスに始まり、ローの舌が侵入してくる。
その舌は意思を持った生き物のように私の口内を吸い尽くす。
「ん…んふ…ッ!」
逃げる舌を追いかけては吸われ、歯列をねっとりと舐め上げられる。
上顎をちろちろと刺激されれば口内を犯されるだけでエリナの身体と心はもう、蕩けてしまいそうだった。
「ふぁっ…ん…ッ、ろぉ…ハァ」
離れることを許してくれた頃にはエリナの息は上がり身体は熱を帯び、瞳は潤んでいる。
この顔をローはたまらなく好きだった。
「くそ…畜生…やりてぇ」
「そっ!…そんなはっきり言わなくても…⁉︎」
「…ペンギンか?スポットに来た、浮上しろ…ああ?居るに決まってんだろ」
いつの間にか電伝虫を取り出しペンギンと連絡を取り合っているローをエリナは顔を赤面させながら見つめる。