第40章 魔女がいたことを忘れない。
「失礼致します。トラファルガー・ローとロードナイト・エリナが逃亡いたした模様です。至急援護とご指示を!」
慌ただしく入室した海兵だが、そこにいた者は誰もすぐには返答しなかった。
「構わん…好きにしろ」
「…しかし⁉︎」
「追わなくていいのかサカズキ⁉︎」
「いいから追うなら好きに追え…。今後は要観察だ」
「…はッ、承知」
気だるそうに葉巻の煙を揺らす赤犬ことサカズキへ横やりを入れたのは海軍中将モンキー・D・ガープ。
海兵が出て行った後、大きくため息を吐いた。
「おいサカズキ…ベガパンクに呪われてもワシは知らねぇぞ」
「今頃発狂してるだろォねぇ〜?彼、あ〜怖い怖い」
黄猿ことボルサリーノはベガパンクの姿を想像して身震いしている。
「…ったく…やってくれるなトラファルガーめ…」
サカズキの眉間の皺は深く刻まれる。
「しかしなぜトラファルガーがロードナイトを?」
ガープの問いにボルサリーノは思い出した。
「そぉいや二年前…あの二人スキャンダルかなんか出てなかったっけ〜?」
「いや、同じ船に乗っていたはずだ」
サカズキは短く答え二本目の葉巻へ手を伸ばす。
「じゃあ最初から計画だったのかトラファルガーは」
苦虫を潰したような表情で机へ両手を投げ出したガープ。
「七武海の称号も剥奪か」
「いやじゃが…二人の間に子でも宿ったら…こんなに都合の良い話はないと思わないかい?」
顎へ手を添え思案したボルサリーノ。
ガープはただ険しい表情で黙っている。
「どうだかな…それは魔女の決める事だ。暫くはまた泳がせておくが良い…この二年で少なからずベガパンクも成果を成す事は出来ただろう」
サカズキの意見に反対する者はいなかった。
外では相変わらず海兵達が慌ただしく駆け回っていた。