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医者と魔女

第34章 タイムリミットはあと5分。








「おい…こっち見ろよ」


ダメ。
今は目が真っ赤だもん。


無視し続けていると小さな溜息が聞こえてから、ローは手を頭の後ろにやり足を組んだ。

「だから昔の話だっつったろ」

エリナの機嫌はなかなか戻らない。

少し沈黙が続いて。

「そういや島で再会した時も雨だったな」

「………。」


「…なぁもう遅いか?」


甘さを乗せたような柔らかなその声色が彼らしくなくて。

そのせいで私は初めてローへ視線を向けた。
不貞腐れた子供のような顔を見られてしまうけど。


ああ…やっぱり私はローが大好きだ。




「…タイムリミットは…あと5分」



「じゃあ間に合わせるさ」




彼の口が孤を描いて瞳は意地悪に揺れる。

そのまま腕を強引に引かれ後頭部は手で包まれる。

キスされた。

雨で濡れた二人は体温が低くて、だから余計に舌の熱さに驚く。

「んふっ…ろ、ろぉ…」

何度も角度を変え貪られていく唇。

口付けながらローはそのままエリナを強く抱き締める。

強引だけど甘いそのキス。

何度したって私の頭は身体はとろけてしまうの。

「ふぁ…ッ…はぁ」

名残惜しそうに唇は離れ見つめ合う二人。

キスした直後の妖艶な色気に満ちたローの表情は私を素直にさせるには充分で。



「なぁ…そんなに俺を独占したいか?」


だめだ。
やっぱりローには敵わない。



「……当たり前じゃん」

「くく…悪い子だ」



親指の腹で涙の筋を拭られれば私の両手はまた彼を求めた。


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